みなさん知っていると思いますけど、日本の船がスエズ運河で座礁して動けなくなりました。欧州に向かう船はみなスエズ運河を通りますので、ここを塞ぐことの経済的損失は非常に膨大となります。
下記ニュース記事を参照ください。(NHKのニュース記事を転記)
エジプトのスエズ運河では、座礁して動けなくなっていた、愛媛県の正栄汽船が所有し、台湾の会社が運航する大型のコンテナ船が現地時間の29日午後、離礁に成功し、座礁から6日ぶりに運河の通航が再開されました。
運河を管理するスエズ運河庁は、29日に開いた会見で、運河の閉鎖にともなう運河庁側の損失が、1日当たり1200万ドルから1500万ドル、日本円で13億1600万円から16億4500万円程度にのぼるとみられると明らかにしました。
そのうえで、「補償や支払い責任については今後の調査によって決まるだろう」と述べ、事故原因などに関する調査結果を待って、補償金の請求について検討する考えを示しました。
事故の原因をめぐって、スエズ運河庁は、強風だけでなく、人的ミスや技術的なエラーなど複合的な要素が絡んで起きたとの見解を示し、この点についても、今後の調査結果で明らかになるとしています。
1日あたりの損害額がべらぼうに高いですね(汗)これに対し、巷では
『保険で賄われるから大丈夫だろう』
『しかし、こんな金額をはらったら保険会社が破綻するんじゃないか』
といった意見がでています。みんな賠償ががどうなるか気になっているみたいなので、いちおう現役損保マンであるわたくしが解説してみます。
ただし、ぼくは海上保険分野は担当したことがないので、いろいろと間違いもあると思います。というわけで、話半分にきいてくださいね。
賠償金は誰が支払うべきなの!?
そもそも賠償金は誰がしはらうのか…ということですが、これは事故を起こした張本人、およびその雇用主、そして船の所有者です。スエズ運河的には誰に請求してもいいので、まずは船の所有者(正栄汽船)に請求するのかなぁ。
んで、船の所有者は賠償保険に入っているはずなので、まずは保険から支払います。その後、保険会社は事故を起こした雇用主にいくらか請求するんじゃないかと思います(専門用語で求償と言います)。
賠償金がやばいことになってるけど、保険会社は大丈夫なの!?
結論は『大丈夫ではないけど、破綻するほどじゃない』です。今回の事故で発生する保険金は
①賠償保険(スエズ運河を止めたことで、発生した損害金)
②船舶本体の保険(座礁したことで船舶が損害を負った)
の二つになります。それぞれについて回答します。
①賠償保険
船舶事故は、賠償金額の上限が国際法で決まっています。船舶の大きさによるんですけど、上限でも30億とかそのくらいだと思う。そのため、上記ニュース記事のように1日あたりの損害が十数億っていわれているけど、そんな金額を支払う必要はないです。
そして保険会社は必ず再保険をかけています。一社で何十億もリスクを背負うのは危険すぎるので、、。
つまりA損保が正栄汽船の保険を先頭で引き受けて、その後B損保やC損保に再度保険をかけている…というわけです。つまり、色んな損保がすこーしずつ引き受けているので、損保1社あたりの損失額はそこまで大きくありません。
②船舶本体の保険
僕が思うに、賠償よりもこちらの方が保険会社的には痛いんじゃないかなぁと思ったりします。
なぜなら、賠償金と違って国際法で上限が決まってないないからです。船ってすごーく高いんですよ。一隻数百億しますし。高いのだと千億超えます…。軽い修理ですむならいいんですが、全損となったら大変です。
あと船が使えない間の営業補償も地味に痛い。
というわけで、わたくしとしては船舶本体の保険はどうなっているのかが気になります。ちゃんと再保険かけていればいいんですが…。
ちなみに船舶本体の保険は、日本だと東京海上と三井住友海上が牛耳っています。
結論 ー賠償金よりも船舶本体の損害が怖いー
というわけで、わたくしの意見としては賠償金よりも船舶本体の損害がどの程度か気になります。。
船が全損となれば数百億の支払いが発生となります…。再保険は掛けているにせよ、1社あたりの負担額は相当なものになるのではないかと…。
どうなることやら。。。
↓クリックいただけるとうれしいです。

保険ランキング
コメント